子どものころ、ピアノの発表会が近づくと、なんともいえない緊張感とワクワクが入り混じった気持ちになったのを覚えています。
ピアノを習っていると、発表会はひとつの大きな節目。
練習の成果を披露する場であり、人前で演奏するという特別な経験でもありました。
私の発表会の記憶といえば……。
初めての発表会。
4歳のころでした。
「おちびちゃんおちびちゃん」と先生の呼ぶ声が聞こえて、誰のことかと思えばどうやら私のことでした。
そのとき最年少でしたので、先生はそう呼んだのです。
年齢順の発表だったので、出番は1番です。
ドレスは母のお手製の、水色地に小花柄のワンピース、靴は履き慣れない白いサンダルでした。
曲は、タイトルは忘れてしまいましたが、マーチのような曲でした。
今でも弾けます。
どなたか曲名が分かったら教えてください。
ドキドキもせずにステージに上がって、いつもの練習通りに弾き終えました。
練習の延長でした。
終わった後には、かすみ草のたくさん入った花束と音符の模様の入った筆箱セットをもらって、それがとても素敵で嬉しかったのを覚えています。
発表会のあの日、舞台袖で椅子に座って足をぶらぶらさせて待っている時間の気持ち。
舞台の照明のシックな色合い。
客席の静けさ。
どれも、いま思えば貴重な体験でした。
自分が先生の立場で、あるいは主催者として発表会を開くなら、どんなふうにしたいかな…とよく考えます。
一人ひとりの「らしさ」が伝わるような、あたたかい発表会にしたい。
うまく弾けるかどうかだけでなく、その子がその曲をどう感じているのかが、自然と伝わってくるような雰囲気がいいな、と思います。
たとえば、クラシックだけでなく、アニメの曲やポップスのアレンジがあってもいいし、連弾や親子での演奏、ちょっとしたお話つきの演出があっても楽しそうです。
そしてピアノだけでなく、歌やフルートなど、それぞれ得意な楽器を演奏したり、合奏みたいなことがあっても楽しそうです。
発表会って、ただ「演奏を披露する場」というだけではないですよね。
発表の場があると思うと、練習に10倍くらい集中します。
長い時間かけて練習する中で、努力する力や、あきらめずにやりきる力が育つし、何より「がんばった自分」を実感して、自信がつきます。
そして何年かたって、その経験が「自分、けっこうがんばってたな」と思える、ひとつの宝物になるのかもしれません。
ピアノで培った継続力や集中力は、将来どんな職業に就いたとしても、必ず活かされます。
そんなふうに考えると、やっぱりピアノの発表会って、子どもにとっても、大人にとっても、大切な体験なんだなあとあらためて思います。
これからの発表会も、一人ひとりにとって心に残るものになりますように。


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